コラム

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ADR(裁判外紛争解決手続)とは?

 
「直接相手と話してると感情的になって、なかなか前に進まなくて・・・」
「誰か法律の知識のある人が間に入ってくれるといいのだけど・・・」
「裁判まではしたくないんです。今後の関係もあるし・・・」
ご相談を受ける際に、よく耳にするのがこれらのお悩みです。
相続の協議もそうですが、気がついたら「どうしてこんなにこじれてるの?こんなはずじゃなかったのに」と疲れてご相談に来られる方も実際多くいらっしゃいます。
何もしないで問題を放っておくと、取り返しのつかないことが起こるかも知れませんし、何より心情的にゴタゴタは早く解決させた方がいいはずですよね。公平な専門家を介して、相手と話し合いができるような場があれば、解決しそうな気がしませんか?
話し合いで解決する方法に「ADR(裁判外紛争解決手続)」があります。ADRには、大きく分けて「調停」と「仲裁」がありますが、「仲裁」では、仲裁人が結果を判断し、「調停」では、当事者の話し合いで合意をするという点が異なるところです。
調停は、裁判所ではなく、法務大臣の認証を受けた民間の機関を使って行うことができます。最近では弁護士会や司法書士会でも調停に関するセンターがたくさんできています。ここでは調停について、裁判との違いを挙げてみましょう。
裁  判 調  停
手続きの内容 証拠調べの手続きなどによって、過去の事実の調査・確定が行われる 証拠調べなどの手続きはないが、当事者間の話し合いによる自主的な解決が促進される
最終的な判断 最終的に裁判官が判断する 当事者の話し合いで合意を目指す
強制の有無 判決内容を強制することができる 合意した内容を強制することはできない
調停のいい所は、当事者が話しあい、当事者自身が納得した解決方法を決められることです。裁判では、判決が出ても納得できずに不満が残ったり、相手が判決どおりに実行しないことも多々あり、強制するためにその他の手続き(強制執行)をしなければなりません。調停の場合では、実際に決めた解決策を強制することはできなくても、他ではない自分達で決めた解決策ですから実行する可能性も非常に高く、双方の満足度も高い場合が多いのが特徴です。
東京司法書士会にも「すてっき」という調停センターがあり、民事に関するあらゆる事件を扱っています。「すてっき」では、「聴くこと」についてトレーニングを受けた司法書士が調停人となります。

(東京司法書士会調停センター「すてっき」パンフレットより抜粋)

実は、私も『すてっき』に調停人として登録されているのですが、「聴く」トレーニングというのは、思ったよりもすごく難しいのです。トレーニングの内容としては、それこそ表情や目線、姿勢から、声のトーン・大きさや相づちなど様々な要素があります。当事者との座る位置の距離や、体の向きなどにも注意を払います。
例えば、足を組んで座るくせがあると、体が右左どちらかに傾きますよね?いくら当事者の間に座っても、体がどちらかに傾いていると、背中側になってしまう当事者からすれば「相手側に肩入れしているの?」という不安を引き起こす原因になりかねません。
調停は、「当事者同士の話し合いによる解決」が目的ですから、両者の話す量にも気を配ります。一方が話している時間が明らかに長くなってしまうと、「相手の話ばかり聞いて・・・私は思っていることが全然話せていない!」という不満が残ってしまうかもしれません。トレーニングでは、ロールプレイングをたくさん行い、当事者役を体験した人がどんな気持ちになったのかなどを調停役に伝え、意識を高めていくのです。
お話を「聴くこと」は奥が深くて、とても難しいですが、皆様の相談をしっかり聴けるよう、研修などに参加しながら日々努力中ですので、「困ってるんだけど聞いてもらえるかしら・・・」と迷っていることがあれば、是非お問合せくださいませ。
2013年5月20日
司法書士 李
相続に関するよくある質問