コラム

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「信託」ってなに?

 

 

みなさんは、「信託」という言葉を聞いたことがありますか。

 

最近では映画のタイトルの一部にもなっていましたが、信託とは、辞書によると「信用して任せること」という意味だそうです。

実は、相続や財産管理の分野で、信託という言葉をよく聞くようになりました。

 

「遺言」や「成年後見」は、今ではよく知られている言葉になり、遺言を遺したい、成年後見制度を詳しく知りたいなど、相談者から直接聞けるようにもなりました。

 

「家族が将来自分の相続でもめないように・・・」「自分に思いがけないことが起こったら・・・」こんな不安を抱える人は少なくありません。しかし遺言は、生前に効力を発生させることはできませんし、成年後見は、判断能力がなくなる前には効力がないのです。

 

なんとか自分がしっかりしているうちに、家族や自分のために計画を実現させたい・・・それをかなえることができる可能性があるのが「信託」なのです。

 

今回は、信託の仕組みについて少し触れたいと思います。

信託を理解するには、3人の登場人物を覚えることが必要です。

 

「委託者」-自身が持っている財産を信用して他人(受託者)に預ける人

「受託者」-財産を委託者から任せられ管理を行う人

「受益者」-委託者が預けた財産を実際に利用したりして利益を受ける人

 

信託はこの3人の登場人物によって、財産を運用・管理するプランを立て、契約、実行するシステムなのです。

 

シンプルな例を作ってみましょう。

 

Aさんは自宅の土地・建物と老後に使用するための預貯金を持っています。Aさんの息子Bさんはしっかり者で、AさんはBさんをとても信頼しています。そしてAさんの妻Cさんは、体が弱く病気がちで、お金の管理も得意ではありません。

 

Aさんは、自分に何かあったときのために、妻Cさんが心配せず自宅にそのまま暮らすことができ、Cさんが将来ホームなどに入所することとなった場合でも、自宅を処分し、今ある預貯金とあわせてCさんの生活費に充てることができたら、と考えたとします。

 

この場合だと、Aさんは「委託者」として、不動産と預貯金を息子Bさんに預けます。Bさんは「受託者」として、「受益者」のCさんのために、Aさんから預けられた不動産と預貯金を管理するのです。

 

どういう管理方法にするのか、どういうときに管理が終了するのかなど、細かい内容は、委託者Aさん、受託者Bさんで取り決めていきます。息子のBさんだけだと不安だと思えば、司法書士など専門家を「信託監督人」としてアドバイザーにすることも可能です。

 

こうして将来のプランを今から形に変えることができるのが、「信託」なのです。

 

財産を預けると説明しましたが、信託の場合、実際に不動産などの名義は「受託者」に変更しなければなりません。また、信託の内容を変更する方法など、長い将来に起こりうることを想定して作る必要もあります。「遺言」や「成年後見」を併用してプランを立てることも大事になることがあります。

 

まずはご自身が今までぼんやりと考えていたプランを、専門家などに相談して形にしてみてはいかがでしょうか。

 

 

2013年1月24日

司法書士 李

 

相続に関するよくある質問