コラム

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法律婚と事実婚ではどう違う?

 

 最近、50代のある芸能人が10年の事実婚を経て入籍、というニュースを見ました。お子さまの自立を機に、事実婚ではなく入籍することを選択したのでは、とのこと。

 一般でも、50歳以上の中高年の婚活は増えているそうです。今では様々な団体がイベントを開催しており、実際にご結婚をされたり、入籍はせずとも事実婚としてパートナーと一緒に生活をはじめるきっかけとなっているようです。

 

 人生の後半にさしかかって新たなパートナーと過ごすことを決意したとき、入籍をする法律婚と、入籍をしない事実婚では、どのような違いがあるのでしょうか。

 

 法律婚と事実婚で違いがでる代表的なものは、税金・相続です。税金や相続の場合は、民法上の婚姻関係が判断基準となります。入籍をしていない事実婚の場合、所得税や贈与税の配偶者控除、医療費控除は適用されませんし、配偶者として法定の相続を受けることができません。

 

 では、年金や公的医療保険はどうでしょうか。実は、年金や公的医療保険などの社会保障については、生計を同一とする関係にあるという実態を重視するので、事実婚であっても、法律婚とほぼ同じ条件を受けられることが多いのです。意外と知られていないことかもしれませんが、同じ住所に住む同一世帯のパートナーの場合、希望すれば、住民票中に「夫(未届)」「妻(未届)」といった記載をすることができます。事実婚の場合、住民票をひとつにしておくことで、公的なサービスが受けやすくなります。

 

 また、将来的なことを考えると、どうしてもつきまとうのが、介護や医療の問題です。パートナーが不幸にも認知症などを患って判断ができなくなった場合、老人ホームの入居手続、手術など医療行為の同意、入院時の保証人になれるかどうかは、事実婚の場合、法律婚と同じ扱いを受けるのは難しい場合が多くなります。また、成年後見人を立てようと考えても、認知症になった後で行う成年後見の申立は4親等までの親族からされる必要がありますので、事実婚の配偶者は申立人になれないのです。

 こういった場合に備えて、パートナーのために対策を立てることが必要になります。将来に備えた対策の一つに「任意後見契約」があります。任意後見契約とは、ご自身が元気なうちに信頼できる後見人を選び、もし自分の判断能力が衰えてしまった時には、財産管理や看護を代わりに引受けてもらうよう、公正証書によって契約をする制度です。第三者でも後見人になることができるため、パートナーをお互いの後見人とすることができます。また、パートナーに財産を遺したいということであれば、遺言書を作成しておくことも重要です。

 

 共に暮らす大切なパートナーだからこそ、お互いが不安になったり、困ったりしないように、色々な場面を考えながら、お互いにあった選択をして、早めの管理をすることが大切ですね。

 

2012年11月15日

司法書士 李

 

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