相続の基礎知識

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9-3 厚生年金の遺族給付

 

下記の方が亡くなったときに遺族が受給できる年金です。

・厚生年金または共済年金被保険者(第2号被保険者)

・老齢厚生年金受給者または退職共済年金受給者(受給資格期間を満たしている方)

 

(1)遺族厚生年金

 

■概要

 

厚生年金に加入している人が、以下の①~④で死亡した場合に、遺族に支払われる年金です。

 

①在職中に死亡した場合

②在職中に初診日のある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡した場合

③障害等級1級または2級に該当する障害厚生年金の受給者が死亡した場合

④老齢厚生年金を受けている人や受給資格期間を満たしている人が死亡した場合

 

■支給要件

 

①被保険者が死亡したとき

②被保険者期間中の傷病がもとで初診の日から5年以内に死亡したとき

※ただし、遺族基礎年金と同様、死亡した者について、保険料納付期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あること。

※ただし平成28年4月1日前の場合は死亡日に65歳未満であれば、死亡月の前々月までの1年間の保険料を納付しなければならない期間のうちに、保険料の滞納がなければ受けられます。

③老齢厚生年金の資格期間を満たした者が死亡したとき。

④1級、2級の障害厚生年金を受けられる者が死亡したとき。

 

■受給対象者

 

被保険者の死亡当時、生計を維持されていた以下の者がいたときに、受給順位が高い者のみが受給対象者となります。

 

[第1順位]

配偶者、子(18歳到達年度の年度末を経過していない者または20歳未満で障害年金の障害者等級1・2級の者)

※受給権のある配偶者と子がいる場合は、配偶者に全額支給され、子には支給されません。

※夫が死亡した場合、子のいない30歳未満の妻の遺族厚生年金の支給期間は5年間のみです。

[第2順位]

55歳以上の夫、父母(60歳から支給)

[第3順位]

孫(18歳到達年度の年度末を経過していない者または20歳未満で障害年金の障害者等級1・2級の者)

[第4順位]

55歳以上の祖父母(60歳から支給)

 

注)優先順位が高い者が受給資格を失っても、次順位の者に受給権は移りません。つまり、配偶者や子がいる場合には、父母などに受給権は発生しません。

 

■年金額

 

・被保険者の死亡時点で計算した老齢厚生年金の報酬比例部分の額の4分の3相当額

・被保険者期間が300月に満たない場合には、300月で計算します

 

■提出先

 

(ⅰ)在職中に亡くなった場合 → 最後に勤務した会社を管轄する年金事務所

(ⅱ)退職後に亡くなった場合 → 住所地を管轄する年金事務所

 

 

(2)中高齢寡婦加算

 

■概要

 

遺族厚生年金の加算給付の1つです。

夫が死亡したときに40歳以上で子のない妻(夫の死亡後40歳に達した当時、子がいた妻も含む)が受ける遺族厚生年金には、40歳から65歳になるまでの間、中高齢の寡婦加算(定額)が加算されます。

妻が65歳になると自分の老齢基礎年金が受けられるため、中高齢の寡婦加算はなくなります。

 

■受給対象者

次のいずれかに該当する妻

①夫が亡くなったとき、40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいない妻

②遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻(40歳に達した当時、子がいるため遺族基礎年金を受けていた妻に限る。)が、子が18歳到達年度の末日に達した(障害の状態にある場合は20歳に達した)ため、遺族基礎年金を受給できなくなったとき。

 

※ 長期要件(老齢厚生年金の受給権者または受給資格期間を満たしている方が死亡したとき)の事由による遺族厚生年金の場合は、死亡した夫の厚生年金保険の被保険者期間が20年(中高齢者の期間短縮の特例などによって20年未満の被保険者期間で老齢厚生年金の受給資格期間を満たした人はその期間)以上の場合に限る。

 

■支給額

 

40歳から65歳になるまでの間、589,900円(年額)が加算されます。

 

※昭和61年4月1日から60歳に達するまで国民年金に加入した場合の老齢基礎年金の額と合わせると、中高齢の加算の額と同額になるよう決められています。

 

 

(3)経過的寡婦加算

■概要

 

遺族厚生年金の加算給付の1つです。

遺族厚生年金を受けている妻が65歳になり、自分の老齢基礎年金を受けるようになったときに、65歳までの中高齢寡婦加算に代わり加算される一定額を「経過的寡婦加算」といいます。

これは、老齢基礎年金の額が中高齢寡婦加算の額に満たない場合が生ずるときに、65歳到達前後における年金額の低下を防止するため設けられたものです。

65歳以降に初めて遺族厚生年金を受け始めた妻にも加算されます。

なお、遺族厚生年金の受給者が障害基礎年金の受給権も同時に有しているとき(ただし、支給停止になっている場合は除く)は、経過的寡婦加算は支給停止となります。

 

■受給対象者

 

次のいずれかに該当する場合に遺族厚生年金に加算されます。

 

①昭和31年4月1日以前生まれの妻に65歳以上で遺族厚生年金の受給権が発生したとき

②中高齢の加算がされていた、昭和31年4月1日以前生まれの遺族厚生年金の受給権者である妻が65歳に達したとき

 

■支給額

 

遺族厚生年金の経過的寡婦加算額の表(平成24年度価格)

生年月日 加算額
大正15年4月2日 ~ 昭和02年4月1日 588,900円
昭和02年4月2日 ~ 昭和03年4月1日 559,700円
昭和03年4月2日 ~ 昭和04年4月1日 531,600円
昭和04年4月2日 ~ 昭和05年4月1日 505,600円
昭和05年4月2日 ~ 昭和06年4月1日 481,400円
昭和06年4月2日 ~ 昭和07年4月1日 458,800円
昭和07年4月2日 ~ 昭和08年4月1日 437,700円
昭和08年4月2日 ~ 昭和09年4月1日 417,900円
昭和09年4月2日 ~ 昭和10年4月1日 399,200円
昭和10年4月2日 ~ 昭和11年4月1日 381,700円
昭和11年4月2日 ~ 昭和12年4月1日 365,200円
昭和12年4月2日 ~ 昭和13年4月1日 349,600円
昭和13年4月2日 ~ 昭和14年4月1日 334,800円
昭和14年4月2日 ~ 昭和15年4月1日 320,800円
昭和15年4月2日 ~ 昭和16年4月1日 307,600円
昭和16年4月2日 ~ 昭和17年4月1日 295,000円
昭和17年4月2日 ~ 昭和18年4月1日 275,000円
昭和18年4月2日 ~ 昭和19年4月1日 255,600円
昭和19年4月2日 ~ 昭和20年4月1日 236,000円
昭和20年4月2日 ~ 昭和21年4月1日 216,300円
昭和21年4月2日 ~ 昭和22年4月1日 196,700円
昭和22年4月2日 ~ 昭和23年4月1日 177,000円
昭和23年4月2日 ~ 昭和24年4月1日 157,300円
昭和24年4月2日 ~ 昭和25年4月1日 137,700円
昭和25年4月2日 ~ 昭和26年4月1日 118,000円
昭和26年4月2日 ~ 昭和27年4月1日 98,300円
昭和27年4月2日 ~ 昭和28年4月1日 78,700円
昭和28年4月2日 ~ 昭和29年4月1日 59,000円
昭和29年4月2日 ~ 昭和30年4月1日 39,400円
昭和30年4月2日 ~ 昭和31年4月1日 19,700円
昭和31年4月2日 以後

 

昭和61(1986)年4月1日において30歳以上の人(昭和31(1956)年4月1日以前生まれ)の人が、60歳までの国民年金に加入可能な期間をすべて加入した場合の老齢基礎年金の額に相当する額と合算して、ちょうど中高齢寡婦加算の額となるよう、生年月日に応じて設定されています。