相続の基礎知識

8. 相続税

 
 

8-1 相続税の計算の流れ

 

相続税計算の流れ(平成27年 税制改正後)

 
 

8-2 相続税の申告および課税

 

※相続税の申告が必要となる場合および相続税が課税される場合について、8-1の表(相続税の計算の流れ)を用いてご説明致します。

 

 

相続税の申告は、

亡くなった方の財産[(イ)~(ニ)の計]- 亡くなった方の債務[(ホ)+葬式費用(へ)]

 

の算式により計算した課税価格(A)が、基礎控除額(ト)以下となる場合は必要ありません。また、課税価格が基礎控除額を超えることにより、相続税額(C)が生じた場合でも、相続税額(C)から(チ)~(カ)の各税額控除を差し引いた結果、納付相続税額(D)がゼロとなるときは、相続税は課税されないこととなります。

 
 

8-3 相続財産集計の注意点

 

※亡くなった方の本来の相続財産(イ)を集計するに当たっての注意点について、8-1の表(相続税の計算の流れ)を用いてご説明致します。

 

代表的なものは次のとおりです。

 

①貸地、貸家等の評価減

相続財産に含まれる不動産のうち、他人に貸している土地や建物は相続税計算上の評価額が下がる可能性がありますので、注意が必要です。ただし原則として貸駐車場はこれに該当しません。

 

②小規模宅地の特例

亡くなった方が、生前に居住用または事業用に供していた土地で一定のものについて   は、相続税計算上の評価額が最大で80%下がる可能性があります。

この特例による評価減の適用を受けるためには、相続税の申告が必要となります。また、その適用要件につきましては、相続開始前の当該土地の使用状況や、当該土地を相続する者等によって異なりますので、事前に税務署にて確認されることをお勧め致します。

 

③名義預金

亡くなった方の家族の名義になっている預金、有価証券のうち、実質的に亡くなった方がその管理等をしていたとみなされるものは、亡くなった方の財産として相続税の対象となってしまう場合がありますので、注意が必要です。

④事業承継税制

中小企業等の後継者が、相続によりその会社の株式を、亡くなった方から相続した場合、一定の要件を満たせば、その株式に係る相続税の80%は納税が猶予されます。

 
 

8-4 贈与税と相続税の関係

 

※贈与税(ハ)・(ニ)と、相続税の関係について、8-1の表(相続税の計算の流れ)を用いてご説明致します。

贈与税とは、財産を持っている方が、ご自身の意思で現金や不動産等の財産を贈与したときに、その財産をもらった方に対して課される税金です。

贈与税は、相続税に比べて基礎控除額が低く、かつ税率が高く設定されています。これは、相続税を逃れるために過度な生前贈与をされないようにするためのものです。

このように贈与税は、相続税の補完的役割を果たすものと位置づけることができます。

また、一方、生前贈与を有効に活用することにより、相続税の節税をはかることも可能ですので、両者の関係は深いものといえます。

なお、贈与財産(ハ)のうち、下の表に掲げる特例の適用を受けて贈与された財産については、相続開始前3年以内の贈与であっても相続財産に含める必要がありませんので、相続税の節税として有効な生前贈与となる可能性があります。

贈与税に係る特例制度

1.贈与税の配偶者控除

制度の概要 婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための 金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円の他に最高2,000万円まで控除できると

いう特例です。換言すれば、最高2,000万円までが無税で贈与できるということです。

適用要件 (1)夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと。 (2)配偶者から贈与された財産が、自分が住むための居住用不動産であること、又は居住用不動産を取得するための金銭であること。

(3)贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与により取得した国内の居住用不動産、又は贈与を受けた金銭で取得した国内の居住用不動産に、贈与を受けた者が住んでおり、 その後も引き続き住む見込であること。

(4)贈与税の申告を行うこと

 
2.住宅取得資金贈与の非課税制度

制度の概要 父母や祖父母等の直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた者が、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その住宅取得等資金により自分の居住用の一定の家屋の新築若しくは取得、又は一定の増改築をし、その家屋に同日までに居住する場合又は遅滞なく居住することが確実であると見込まれる場合には、住宅取得等資金のうち一定金額まで贈与税が非課税となります。
非課税限度額 次の区分によります

  省エネルギー・耐震性を備えた良質な住宅家屋 その他の住宅家屋
平成24年 1,500万円 1,000万円
平成25年 1,200万円 700万円
平成26年 1,000万円 500万円

※適用対象となる住宅用家屋の床面積は240㎡まで。(東日本大震災の被災者の場合は面積制限はありません。)

受贈者の要件 以下の全ての要件を満たすことが必要となります。 
(1)贈与時に日本国内に住所を有すること 
(住所を有していない場合は、日本国籍を有し、かつ、受贈者又は贈与者がその贈与前5年以内に日本国内に住所を
有したことがある場合には可)  
(2)贈与時に贈与者の直系卑属であること  
(3)贈与を受けた年の1月1日において20歳以上であること  
(4)贈与を受けた年の合計所得金額が2000万円以下であること  
一定の家屋の新築・取得、一定の増改築 新築、中古取得、増改築等の状況に応じてそれぞれ要件がありますので事前に税務署にて確認されることをお勧め致します。
 
 

8-5 基礎控除額

 

※基礎控除額(ト)についての注意点について、8-1の表(相続税の計算の流れ)を用いてご説明致します。

 

法定相続人の中に養子が含まれる場合、基礎控除額の計算上、一定の制限があります。

前述しましたとおり、相続税は、その計算上で基礎控除額というものがあり、財産等を集計して算出した課税価格が、この基礎控除額以下であれば相続税は課税されません。また税務署に相続税の申告をする必要もありません。

 

基礎控除額は下記の算式により算出されます。

 

基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

(例:法定相続人が3人の場合の基礎控除額 3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円)

 

上記算式中の法定相続人の数の中に養子が含まれる場合、基礎控除額の計算上、法定相続人の数に含める養子の数は次の通り制限されます。

・ 死亡した方に実子がいる場合 : 1人まで含めることができます。

・ 死亡した方に実子がいない場合: 2人まで含めることができます。

これは、過度に養子を増やすことにより基礎控除額を増やすことを通じて相続税を逃れる行為を防ぐためのものです。