手続

1. 相続事例紹介 사례 소계

 
 

1-1 韓国籍の父の遺産の分配や税金について

 

Q.亡くなった父は在日の韓国籍で、相続財産が日本と韓国にあります。父の遺産の分配や税金はどうなるのでしょうか。母は韓国人で、私は日本国籍を取得しています。

相続の準拠法

 在日韓国人の「相続」については韓国民法が適用されます。被相続人だけが韓国籍で、相続人がすべて帰化し日本国籍を取得していても、その相続は韓国民法によります。韓国民法の規定によって、相続人の範囲や法定相続分などが決められています。

相続順位

 韓国民法は、相続の順位として、第1順位を直系卑属(子や孫)、第2順位を直系尊属(父母や祖父母)、第3順位を兄弟姉妹、第4順位を4親等以内の傍系血族と定めています。被相続人の配偶者(夫または妻)は、第1順位の直系卑属が相続人となるとき、および第2順位の直系尊属が相続人となるときには、その相続人と同順位で共同相続人になります。

 第1順位と第2順位の相続人がいないときは、配偶者のみが単独相続人となります(この点は日本相続法と大きく異なります)。

 今回のケースでは、被相続人の配偶者である母と、あなたが共同相続人となります。

法定相続分

 配偶者の法定相続分は、第1順位の場合には子の相続分の5割増しとなり、第2順位の場合には、直系尊属の相続分の5割を加算した割合となります。

 今回のケースでは、被相続人の配偶者である母の相続分が5分の3、あなたの相続分が5分の2の割合となります。

 なお、戸主承継者や嫁いだ女子も相続分は同一です。また、遺言による場合や共同相続人全員の協議により遺産が分割される場合には、法定相続分と違った内容で相続することもできます。

相続税の申告、納税

 在日韓国人である被相続人の遺産が日本以外の国にもある場合には、相続税の計算は、それぞれの遺産の所在する国における相続税法によって課税されます。相続そのものは韓国民法に準拠し、税金は各遺産の所在地国の税法によって計算します。

 日本の相続税は、居住者であった被相続人につき原則として全世界の遺産を課税対象とする一方、韓国の相続税法では海外同胞の場合には韓国国内遺産のみを課税対象とします。

 そして、相続税額の計算の結果、納税が生じる場合には、それぞれの国において納税義務が発生します。その際、それぞれの国によって課税対象範囲(当該国外遺産を含むか否か)が異なりますが、ある財産について2国間の二重課税が生じた場合には、税額控除の規定を適用し、二重課税部分を控除したあとの税額を納付することになります。

相続登記に必要な書類

在日韓国人の相続手続は、日本人の相続手続と必要書類が異なります。

在日韓国・朝鮮人の方の、遺産分割(相続手続)に必要な書類は下記のとおりです。

  • ① 韓国戸籍謄本及びその日本語翻訳文 (原則、被相続人の出生~死亡に至るまでのもの)
  • ② 法定相続人全員の家族関係証明書及びその日本語翻訳文
  • ③ 被相続人の閉鎖外国人登録原票記載事項証明書
  • ④ 相続人の住所証明書
  • ⑤ 相続人全員の印鑑証明書
  • ⑥ 遺産分割協議書
  • ⑦ 相続関係説明図
  • ⑧ 固定資産税評価証明書

※ 必要書類を揃えることができないとき(在日韓国・朝鮮籍の方で、身分関係が整理されていなく、戸籍謄本を取得しても法定相続人が特定できない場合や、戸籍謄本自体が取得できない場合について)は、別途ご相談ください。

 
 

1-2 法定相続人と相続順位

 

Q.私は在日韓国人ですが、私が 亡くなった場合には韓国の法律が適用されるのでしょうか? 日本の法律と違うところはどんなところでしょうか?

A.相続は、被相続人の本国法によることになっていますので、あなたが亡くなった場合には、韓国民法が適用されることになります。

韓国民法では、配偶者・直系卑属・直系尊属・兄弟姉妹のほかに4親等内の傍系血族も法定相続人とされています。

相続の順位はつぎのとおりです。

①第1順位の法定相続人:被相続人の直系卑属

直系卑属が数人いるときには、被相続人に最も近い親等の直系卑属が先順位になり、先順位者が数人いるときには共同相続となります。たとえば、被相続人に子や孫がいる場合に、孫は相続人になりません。子が複数人いる場合には共同して相続することになります。

日本民法が「被相続人の子」としているのと異なり、「直系卑属」とされています。つまり、子が全員相続放棄したような場合には、孫が直系卑属として第一順位の相続人となります。相続開始前に既に先順位の子が死亡し、あるいは相続欠格となっていた場合に、後順位の孫が代わって相続する代襲相続とは異なります。

直系卑属であれば、実子・養子・認知された婚姻外の出生子・男女に関わらず、相続順位に差異はありません。また胎児は既に出生したものとみなされています。

②第2順位の法定相続人:被相続人の直系尊属

直系尊属は、直系卑属がいない場合に相続人となります。

直系尊属が数人いるときは、被相続人からの親等が近い者が先順位となり、同順位の直系尊属が数人いるときには共同相続となります。たとえば被相続人の父母と祖父母がともに生存していた場合には、父母が先順位となり共同相続人となります。

直系尊属であれば父系・母系・養家側・生家側を問わず、実父母と養父母がいるときは共に同順位で相続人となります。また、性別による順位の差異もありません。

③第3順位の法定相続人:被相続人の兄弟姉妹

日本民法とは異なり、兄弟姉妹は、被相続人に直系卑属・直系尊属も、配偶者もいない場合にのみ相続人となります。

兄弟姉妹には、男女・既婚・未婚・自然血族・法定血族・父系・母系を問いません。兄弟姉妹が数人の場合は、同順位で共同相続人となります。なお、兄弟姉妹の直系卑属にも代襲相続が認められています。

④第4順位の法定相続人:4親等以内の傍系血族

被相続人に直系卑属・直系尊属・兄弟姉妹、さらに配偶者もいない場合にだけ、4親等以内の傍系血族が相続人となります。性別・既婚・未婚・父系・母系を問いません。

同順位の相続人が数人いるときは、被相続人からの親等が近い者が先順位となり、同親等の者が数人いるときは共同相続となります。

⑤配偶者は常に第1順位の相続人

直系卑属や直系尊属がいる場合には、それらの者と同順位で共同相続人となります。そして、被相続人の直系卑属も直系尊属もいない場合には、配偶者が単独相続人となります。

日本民法と異なり、兄弟姉妹との共同相続とはなりません。

また、韓国民法においても、被相続人の遺言がある場合にはその遺言の内容に従って相続財産が処分されます。また、在日韓国人の場合、遺言で日本法を相続の準拠法に指定することもできます。

(参照文献:「新・韓国家族法」日本加除出版)

→ 資料見本「日韓相続法比較表」もご覧ください。

 
 

1-3 配偶者の相続分

 

Q.先日、韓国籍の夫が亡くなりました。私たちには子供がなく、夫の両親も数年前に亡くなっています。夫には兄弟がいますが、私と夫の兄弟が共同で相続することになるのでしょうか?

A.在日韓国人の「相続」の問題については韓国民法が適用されることになります。

韓国民法では、相続の順位として、第1順位を直系卑属(子や孫)、第2順位を直系尊属(父母や祖父母)、第3順位を兄弟姉妹、第4順位を4親等以内の傍系血族と定めています。

被相続人の配偶者は、第1順位の子や孫が相続人となるとき、第2順位の両親や祖父母が相続人となるときは、その相続人と同順位で共同相続人になります。

しかし、第1順位と第2順位の相続人がいないときは、兄弟と共同で相続することはなく、配偶者のみが単独相続人となります。この点が日本民法と大きく異なります。

つまり、今回のケースでは、あなたが配偶者として単独で相続人となります。

 
 

1-4 代襲相続について

 

Q4 先日、韓国人である夫の父が亡くなりました。同じく韓国人であった夫はすでに亡くなっているのですが、父の相続に関して相続人は誰になるのでしょうか?

A. 相続人が、被相続人の相続開始以前に死亡したときは、相続人の子がその相続人に代わって相続人となります。これを代襲相続と言います。

相続権を失った者を「被代襲者」、代わりに相続する者を「代襲者」といいます。

相続は、被相続人の本国法によることになりますので、この代襲相続に関しても、韓国民法が適用されることになります。

 韓国民法においても、日本民法と同様に代襲相続についての規定がありますので、相続人となる者が、被相続人より先に亡くなっている場合には、代襲者は被代襲者の順位に代わって相続人となります。韓国民法では配偶者も代襲相続人となります。

つまり、あなたとご主人との間に子供がいれば、その子供と共同して代襲相続することになり、子供がいなければあなたが単独で代襲相続人になります。

ただし、相続するのは本来あなたの夫が受けるべき相続分に限られるので、あなたのご主人の他に相続人がいる場合には、他の相続人と共同で相続することになります。

なお、夫が亡くなった後にあなたが再婚をしている場合は、代襲相続人になれません。

 
 

1-5 相続放棄について

 

Q在日韓国人である父が亡くなって一年が経ちましたが、父の債権者であるという者から突然、返済を求められました。このような債務があることは全く知りませんでしたが、今から相続放棄をすることはできるのでしょうか。

A. 相続は、被相続人の本国法によることになります。相続放棄の問題も相続問題なので、この場合も韓国民法が適用されることになります。

 相続放棄とは、相続による権利義務の承継を一切拒否するものです。

 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならず、被相続人の財産も負債も一切承継しません。

 韓国民法では、相続の開始があったことを知った日から3か月以内に放棄することができると規定しています。この点は日本民法と同じ趣旨です。

 実務上よく問題となるのは、3か月の期間を経過した後に相続財産を超える債務が判明した場合です。日本民法では、3カ月の期間の経過は自らが相続人であると知った時であるとしながらも、相当な理由がある場合には、例外的に「相続人が相続財産の全部の存在を認識した時」とする最高裁の判決により、相続債務の存在を知らなかった相続人を救済しています。

ところが、韓国大法院は「相続財産の存在を知らなければ期間が進行しない訳ではない」と期間について厳格に判断していました。

 しかし、それでは相続人に過剰に債務を負わすことになるとして法律を改正し、「相続人が、相続債務が相続財産を超過する事実を重大な過失なくして、期間内に知ることが出来なかった場合には、その事実を知った時から3か月以内に限定承認することが出来る。」という規定を置くことにより、この問題を解決しました。

 相続の放棄をしようとする者は、3か月以内にその旨を家庭裁判所に申し出る必要があります。

被相続人が日本に住んでいた場合などは、日本の家庭裁判所に放棄の申述をすることができますが、韓国内に相続債務がある場合には、韓国の家庭法院に対しても相続放棄の申告をする必要があります。

あなたは、重大な過失なくして債務の存在を知らなかったわけですから、父の債務の存在を知った時から3か月以内に日本の家庭裁判所に限定承認の申述をすることができます。

限定承認とは、相続によって得た財産の限度においてのみ、被相続人の残した債務について責任を負うというもので、あなたが、相続財産以上の債務を相続することはありません。

 
 

1-6 生前の相続放棄

 

Q 私は在日韓国人ですが、私の所有するおもだった財産を、会社を継ぐことになる長男に残したいと考えています。他の子供たちにはこれまで十分な資金援助を行っており、そのことについて争うことはないとは思うのですが、念のため私の生存中に長男以外の子供たちに相続分の放棄をさせようと思っています。そのようなことは可能でしょうか。

A.在日韓国人の「相続」の問題については韓国民法が適用されます。相続の放棄や遺留分の放棄についても韓国民法の規定に従って考えることになります。

韓国民法上、相続分の生前放棄は認められていません。相続開始前に相続放棄を認めれば、親の権威や、家業を継いだ者の要望などに放棄が強制されて、むりやり相続分を放棄させるおそれがあるためです。この点は日本民法と同じです。

 では、相談者が、長男にすべての財産を相続させる内容の遺言書を作成し、他の相続人たちに遺留分の放棄をさせるという方法はどうでしょうか。

 遺留分とは、被相続人が有していた財産について、相続人の最低限の取り分として、一定の割合を保障する制度をいいます。

 相談者が長男に全ての財産を相続させる内容の遺言を残したとしても、相続後に他の子供たちから遺留分の主張をされると、一定割合の財産は他の子供たちに帰属することになります。

 そこで、日本の民法では、「相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。」と規定し、家庭裁判所の許可を受けることを条件に遺留分の放棄を認めています。相談者は、他の子供たちには十分な資金援助をしているとのことですから、遺留分の放棄が本人の意志にもとづくものであれば、認められる可能性は高いと考えられます。

 しかし、韓国民法では、この遺留分の生前放棄を認めた規定は存在しませんので、この方法を取ることは出来ません。

 冒頭で述べたとおり、在日韓国人の「相続」の問題については原則として韓国民法が適用されます。しかし、韓国の国際私法は、日本に住所のある在日韓国人が、「相続準拠法として常居所地法である日本法を指定します」と遺言で明確に示した場合は、相続の準拠法を日本法にすることを認めています。これは、長年日本で生活してきた在日韓国人にとって、日本法で処理した方が生活感覚にあっていることもあるからです。

 では、相談者が遺言で相続の準拠法を日本法に指定した場合に、日本民法が規定する遺留分の生前放棄の制度を使うことができるでしょうか。

 この点について現在、裁判所の判断は、「遺言の効力は、遺言者の死亡により効力が発生するところ、遺言者の生前においては、いまだ遺言の効力は発生しておらず、よって、遺言者の将来の相続に関しては、韓国法が適用される。」として、遺言での日本民法の適用による遺留分の生前放棄を否定しています。

よって、相談者の生存中は、他の子供たちに相続分を放棄させることも、遺留分を放棄させることも出来ません。

 ただし、遺言書は必ず残すことをお勧めいたします。

 相続財産を後継者である長男に相続させること、またはその理由などを書き残すことで、遺言者の最後の意思を表明したものですから、尊重されることも多いと思われます。

 また、他の子供たちへの生前の資金援助についても明記することで、他の子供たちから遺留分の主張をされた場合にも、遺留分割合を軽減できることもあります。

※ 参考資料

  •  Q&A 新・韓国家族法 在日コリアン弁護士協会著 日本加除出版
  •  注釈 大韓民国相続法 金疇洙著 日本加除出版
  •  国際私法 山田鐐一著 有斐閣
  •  在日の家族法Q&A 定住外国人と家族法研究会著 日本評論社
  •  韓国大法院ホームページ 総合法律情報